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西野緑道から

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過去の日記

Dec 14, 2004 (Tue)

亀の井別荘と玉の湯

亀の井別荘と玉の湯には同じ通奏低音が流れていると書いた。が、料理の味付けが対照的なように、こと細かく見ていくと意外なほど異なっている。各論になってしまうのだが、人それぞれ好みというものがあろうし、書いておけば参考になるかもしれない。

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■ 建物
亀の井別荘の門亀の井別荘は、食事処や売店などのパブリックスペースと宿泊する離れのある敷地は門で隔てられている(写真)。そのため、日中でも離れの周囲は静謐である。談話室や大浴場へ行くときも、宿泊者と宿の従業員以外には会わない(つまり、ほとんど人と会わない)ので、非常に落ち着いた雰囲気である。玉の湯では、大浴場や談話室へ行く泊まり客と売店などへの外来客がフロントのある建物の前ですれ違う。離れを結ぶ渡り廊下や談話室へは、泊まり客以外立ち入り禁止の札が掲げられているが、その表示がなければうっかり入ってしまいそうだ。いい意味で、にぎやかで明るい雰囲気である。離れの渡り廊下は、亀の井別荘も玉の湯もたいへんよく似ている。亀の井別荘の渡り廊下には曲がり角ごとになぜか象の置物がある。

■ 客室亀の井別荘の客室
いずれも泊まった部屋は限られるので、その範囲での話である。亀の井別荘の離れ(写真上)は和室二間が多く、水屋と勝手口が付属している。寝室の準備などは勝手口から入って済ませてくれるし、食事もそちらから持ち込むので、玄関からの出入りはない。客としてはたいへん落ち着ける。玉の湯の離れは和室と洋室各一間で、洋室にベッドを置いた部屋が多い。出入り口は玄関のみだが、ベッドなので寝室はノータッチである。客が出入りする玄関から食事が持ち込まれるのは、普通の旅館ではあたりまえだが、せっかくの離れなのにやや落ち着かない。
亀の井別荘の離れは、いかにも田舎の一軒家という雰囲気だ。古い箪笥や装飾品も置かれている。建具類もそういう雰囲気を盛り上げる古そうなもの。(それが演出であることはスムーズな動きでわかる) 玉の湯は部屋の中に入ってしまうと、言われなければ離れではなく大きな建物の一部とも見えてしまうかもしれない。和風ではあるがモダンでシンプル、調度や装飾品は少なく無駄のない機能的な部屋だ(写真下)。玉の湯の客室玉の湯のベッドはたいへん寝心地のいいということは先にも書いた。亀の井別荘の寝具は、寝心地が悪いわけではないが、至って普通の布団とマットレスである。高級旅館のふかふかの布団を期待すると裏切られる。余談だが、亀の井別荘にはフロントのある本館内にホテル式の洋室もある。機会があれば泊まってみたいと思っている。

■ 庭
どちらの宿も無造作なようで計算された庭である。亀の井別荘の庭は草が少なく、踏まれた土に木の根が見え隠れする。田舎風ではあるが、農家ではなく文士の家といったところ。各離れの庭は塀や生け垣で区切られているので、庭や縁側に出てもプライバシーは確保されている。玉の湯の庭は、草や雑木を生かしており、田舎風の味付けがより強い。談話室の前の庭などは農家の庭先をイメージさせるものがある。各離れの庭は区切られていないので開放感はあるが、人によっては視線が気になることがあるかもしれない。もちろん、障子を閉めてしまえば問題はない。客室と庭を総じて、亀の井別荘の方が離れの構造を生かしており、雰囲気も独特なものがあるように思う。

■ 談話室亀の井別荘の談話室
亀の井別荘の談話室はレンガ造りで天井が高く、こぢんまりとしている(写真上)。背の高い本棚が特徴的だ。渡り廊下に面する窓が小さく、外来客が近づかないので、非常に落ち着いた隠れ家のような雰囲気である。玉の湯の談話室は庭に向かって大きく開口部を取っており、そこからフロントや売店に行き交う人が見える。全体に明るく開放的な雰囲気だ(写真下)。内装や暖炉、調度品などは似ているのに、イメージは対照的である。どちらにもセルフサービスではあるがコーヒーが用意されている。

■ 接客
どちらの宿も、付かず離れず、あまり客の側へは立ち入ってこない控えめな接客である。その上で差があるとしたら、玉の湯の方がややフレンドリーか。亀の井別荘で廊下ですれ違うときには、小声で「いらっしゃいませ」とあいさつされることが多いが、玉の湯では意外なほど元気よく「こんにちは」と言われることがある。玉の湯では若い従業員も客との会話に話題をみつけるように教育されているようだ。こちらから話を続けると、とてもうれしそうに対応してくれるのが印象的である。亀の井別荘の方が伝統的な日本旅館の接客に近いと言えるだろう。玉の湯の談話室

■ 食事
亀の井別荘の食事は薄味である。味付けは素材の風味を楽しむための最低限であり裏方に徹している。出される量は平均的であろう。もちろん、普通に家で食べる夕食などに比べると多いのだが、名物である豊後牛の温泉蒸しなどは、もうちょっと食べたいというのが正直なところ。一方、玉の湯の食事はとにかく品数も一品の量も多い。味付けは亀の井別荘に比べると濃いが、もちろん後で喉が渇くような濃さではない。素材の風味を殺さないぎりぎりのところで料理人が主張している。どちらもいわゆる懐石料理ではないが、完成された田舎料理とでもいった趣である。玉の湯ではさかんにお代わりをすすめてくれる。田舎のもてなしというところか。そういう意味では亀の井別荘の方が高級旅館的な雰囲気といえるかもしれない。

■ 風呂
亀の井別荘の大浴場は非常に特徴的である。石造りの大きな円形の浴槽に天窓から日が差し込み、開放的な明るい雰囲気だ。シャワーは10台以上あるだろうか。かなり大きな浴場である。玉の湯では大浴場を「外風呂」と呼んでいる。亀の井別荘ほど大きくはない。四角い檜の浴槽にシャワーが5台ほどだが、規模としてはこちらが適正だろう。もちろん、どちらも清潔で、タオルの準備や洗面台の設備なども充実している。露天風呂はどちらも似たような雰囲気で、それほど開放感はない。部屋風呂も雰囲気、大きさ共によく似ている。部屋風呂の浴槽は、亀の井別荘が石、玉の湯が檜であった。

■ 食事処
この項はおまけ。外来でも使える食事処の雰囲気を比較する。亀の井別荘の「湯の岳庵」は離れとは対照的ににぎやかな雰囲気だ。大部屋にテーブル席と小上がりがゆったりと配置され、客の話し声が BGM となって響いている。たとえるなら、田舎に昔からある蕎麦屋といった感じ(確か木曽谷のどこかにこんな蕎麦屋があった)。玉の湯の「葡萄屋」は逆に静かで背筋が延びる雰囲気だ。客席の規模もやや小さい。葡萄屋のテーブル席の椅子は妙に座り心地がいい。接客にはそれほどの差は感じられなかった。料理の味付けは食事の項で書いたとおりである。ボリュームは、宿泊時の食事とは逆に湯の岳庵の方が多い。

「亀の井別荘は枯れた男性的な宿、玉の湯は芳醇な女性的な宿」などとよく言わる。なかなかうまい表現だが、そういう単純なイメージではとらえられない部分もあるように思う。こうして各論で書き出してしまうと「亀の井別荘の離れで玉の湯の食事を出せ」などと言ってしまいそうだが、それぞれがそれぞれの中でバランスしているのだから、要素を抜き出して比較するのはあまり得策ではなかったかもしれない。もし最初に泊まるのをどちらにするか迷っているなら、どれかひとつ気になる要素を選んで、そちらにするというのも手ではあろうと思う*1

*1 というわけです。よろしければご参考に。> 誰となく

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ひろぽん (Dec 16, 2004 (Thu) 15:18)

おお、温泉ライターのニューフェイス登場!

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